IPSIニュースレター2021年5月号

2021.05.21

向暑の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。新型コロナウィルス感染症の収束が未だ見えない中、IPSI事務局は在宅勤務を続けてはいるものの、「自然と調和する社会」に向けたランドスケープ・シースケープ・アプローチに関連する様々なプロジェクトや活動に積極的に取り組んでいます。皆様も引き続き健康と安全に留意してお過ごしください。

 さて、2021年5月号のIPSIニュースレターをお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。

1.IPSI事務局より国際生物多様性の日に寄せて

 毎年5月22日は、世界中で地球上のすべての生命を祝福する「国際生物多様性の日」です。2021年の生物多様性の日の包括的なテーマは「私たち自身が解決の鍵 “We’re part of the solution.”」です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックが継続し、また生物多様性の損失が加速する中、このメッセージは、私たち全員がより良い復興のための責任と創造力を持っていることを思い出させてくれます。6月5日、今年の世界環境デーにて、「国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)」が正式に開始され、6月8日の世界海洋デーでは、「海-私たちの生活と生計」を記念します。これまで以上に、人々とその自然への貢献が、持続可能な未来のための地球規模の行動の中心となります。

 この大変な状況においても、IPSIとそのメンバーは、持続可能な利用を通じて社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)を促進するための行動を起こし、知識を統合するために、絶えずコミュニティと連携しています。10年以上にわたる私たちの取り組みは、先住民族や地域コミュニティ(IPLCs)を含むあらゆる職に就く人々が、どのようにして自然と共生しながら、彼らの願望や生計を実現してきたかを継続的に実証してきました。SEPLSアプローチを適用することで、劣化した環境を生物多様性に富んだ土地に回復・再生・活性化させる方法に関するこれらの経験は、私たちが現在直面している課題や、より回復力のある未来への解決策を提供します。

 IPSI事務局は、国際生物多様性の日、世界環境デー、世界海洋デーを記念して、自然の中で撮った私たちの写真を共有し、自然へのコミットメントを再確認します。IPSIメンバーの皆様も、ぜひ自然や生物多様性の中にいるあなたの写真と、あなたがどのように解決の鍵となりうるかについての短いメッセージをご提供ください。2021年6月1日までにお名前と、IPSI団体名、メッセージを添えた写真をisi@unu.edu宛にメールでお送りください。送って頂いた写真とメッセージは、6月上旬に、IPSIウェブサイトや他のソーシャルメディアに掲載させて頂きます。

2.IPSI活動の最新情報

 IPSIは、2021年5月3日よりオンラインで開催されている生物多様性条約第24回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA24)に積極的に参加しています。

 これまでのところ、SBSTTA24での議論はポスト 2020 生物多様性枠組(GBF)、海洋及び沿岸地域の生物多様性、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)の取り組みの作業計画を中心に行われています。これらの議題は本会議で発表され、コンタクト・グループにて更なる非公式な協議が行われました。締結国によるポスト 2020 生物多様性枠組への発言は、主にモニタリング枠組みの実施や、先住民族、海洋・沿岸の生態系、気候変動、都市の生物多様性、自然と文化・人々、人々のニーズ、能力構築、資金に関して、より具体的な指針の追加に比重が置かれました。議題6:海洋及び沿岸地域の生物多様性では、生態学的、または 生物学的に重要な海域(EBSAs)の課題について、議論が白熱しました。締結国は、脆弱な海洋及び沿岸の生態系、気候変動、プラスチックや騒音を含む海洋汚染、深海の問題など、増大する海洋の課題に一層の重点を置くことを求めました。議論8:IPBESの作業計画では、締結国は、社会変容、生物多様性、侵略的外来種、健康など、生物多様性に関連する既存の課題におけるIPBES報告書の重要性を強調しました。IPBES報告書の政策的妥当性をさらに改善し、その結果を関連する生物多様性条約(CBD)の決定に反映させることが提案されました。国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)に本部を置くIPSIは、議題3:ポスト 2020 生物多様性枠組と、議題6:海洋及び沿岸の生物多様性に、オブザーバーとして意見書を提出しました。

 IPSIの意見書(完全版)やその他詳細は、CBD ウェブサイト(英語)からご覧ください。

3.参加報告:FAO-RAP主催 国際生物多様性の日オンラインセミナー

 国際連合食糧農業機関アジア・太平洋地域事務所(FAO-RAP)の生物多様性主流化タスクフォースは、「国際生物多様性の日 私たち自身が解決の鍵 “We’re part of the solution.”」を記念したオンラインイベントを、2021年5月21日に開催しました。

 2019年7月にバンコクで開催された、FAOの農業セクター全体にわたる生物多様性主流化に関する地域協議会での議論を踏まえ、本イベントでは活発なパートナーを集め、アジア・太平洋地域における農業セクターの生物多様性主流化のための革新的なアイディアや新しい方向性を探りました。IPSI事務局のイヴォーン・ユー博士(UNU-IAS研究員)も、IPSIを代表して登壇しました。

 本セミナーの詳細は、FAOウェブサイト(英語)からご確認いただけます。

4. 【5月31日開催】IEEPオンラインイベント「Building on nature: Area-based conservation as a key tool for delivering SDGs」

欧州環境政策研究所(IEEP)は、2021年5月31日23時~6月1日0時30分(日本時間)にオンラインイベント「Building on nature: Area-based conservation as a key tool for delivering SDGs」を他の国際機関と共催します。本イベントは、持続可能な開発目標(SDGs)を世界中で実現するために、地域に根差した保全がいかに役立つかを示す先駆的かつ行動志向のガイダンスの開始を記念したものです。このガイダンスでは、SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)プロジェクトの下で実施され、SATOYAMA Initiative Thematic Review Vol.4にも掲載された、インドネシアのコミュニティ主導の保全を通じた気候変動への適応に関するIPSIケーススタディを含む、30のケーススタディを取り上げています。

 本イベントに関する詳細は、こちら(英語)をご覧ください。

5. 【6月8日開催】UNU-IAS OUIKウェビナー:私たちが望む里海! -海洋研究における女性科学者の声

 国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)は、「世界海洋デー2021」および「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」を記念したウェビナーを2021年6月8日16時~17時30分(日本時間)に開催します。本ウェビナーは「私たちが望む里海!-海洋研究における女性科学者の声」をテーマに、IPSI事務局のイヴォーン・ユー博士(UNU-IAS研究員)をはじめ、日本を拠点に里海の研究に取り組んでいる多国籍、多分野の女性科学者が、海洋への情熱や海洋研究(特に里海、生物多様性および関連する生計の保全)から得た知識や経験を紹介します。本ウェビナーの目的は、国連海洋科学の10年が提唱する「The Science We Need For The Ocean We Want」に取り組むため、社会科学や里海の重要性などの海洋に関する多様な専門知識および総合的な理解を求めることです。

 本ウェビナーの詳細は、こちらから、参加登録はこちらからご確認ください。本イベントは英語で開催され、日本語通訳は提供されませんのでご注意ください。

6.参加報告: MDPIウェビナー「Cultural Landscapes: Old and New Challenges for Sustainability」

 Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI)は、2021年5月13日にウェビナー「Cultural Landscapes: Old and New Challenges for Sustainability」を開催しました。本ウェビナーでは、生物多様性、生態系機能、人間の幸福に多大な影響を与えている放棄と集約化といった最近の土地利用の傾向に対して、伝統的知識や地域の知識と科学的情報を組み合わせることで、文化的景観に関する複数の課題の持続可能な解決にどのように貢献できるかを検証しました。IPSI事務局の西麻衣子博士(UNU-IAS研究員)は、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の概念とアプローチを文化的景観に結び付け、IPSIを通じて様々な利害関係者と協働しているSATOYAMAイニシアティブの10年にわたる取り組みを紹介し、同イニシアティブの今後の活動における課題や機会について論じました。

 本ウェビナーに関する詳細および録画画像は、こちら(英語)をご覧ください。

7. 開催報告:国際生物多様性の日2021シンポジウム

 2021年5月20日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)の後援のもと、日本環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)と共に国際生物多様性の日(IDB)2021を記念したシンポジウムをオンラインで開催しました。本シンポジウムは「私たち自身が解決の鍵 We’re part of the solution #ForNature」をテーマに、ポスト2020生物多様性枠組および日本国内における取り組みの最新情報を紹介しました。パネルディスカッションでは、IPSI事務局の西麻衣子博士(UNU-IAS研究員)が、「私たち自身が解決の鍵となる」ための方法について知見を発表しました。

 本イベントの詳細は、こちらをご覧ください。

8. SATOYAMA保全メカニズム(SDM)2021に関するお知らせ

 SATOYAMA保全支援メカニズム(SDMは、IPSI下での取り組みの促進のため、2013年に公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、環境省、UNU-IAS(IPSI事務局)が共同で設立したIPSI協力活動です。毎年、選定されたIPSIメンバーに対し、現場プロジェクト、会議やワークショップ、研究活動などの実施のための資金を提供しています。2021年SDMプロジェクトは現在準備中で、6月中旬ごろに提案募集を開始する予定です。全てのIPSIメンバーが応募対象となります。募集開始時に、SDM事務局からIPSIメンバーの皆様にご案内メールを送るほか、IPSI事務局からのメール、IPSIニュースレター、IPSIウェブサイト、およびSDMウェブサイトで告知しますので、ご留意ください。

9. ケーススタディ紹介:社団法人 台湾景観環境協会 (TLEA)

 今月は、IPSIメンバーである台湾の社団法人 台湾景観環境協会 (TLEA)のケーススタディ「Linking biodiversity conservation, green production and local mutual trust in a SEPL(S)」をご紹介します。

 本ケーススタディは、豊かな生物多様性が保持され、2013年以降、人々が従来の農法からより環境に配慮し、エシカルな農法に移行している台湾の鯉魚潭(Liyu)コミュニティにおける農地生態系の再生に焦点を当てています。農家は、イネいもち病を防除するために、水田の余剰水の有効活用、食糧生産を脅かし、収入減を招くスクミリンゴガイの防除の導入、稲栽培にアカウキクサを緑肥として利用など、いくつかの取り組みを実践してきました。このような取り組みと、長期にわたる生態学的モニタリングの結果として、本ケーススタディは、「有機/エコファーミングの水田は、様々な分類群(例:水生種)において種の豊富さと多様さを支えていること。これらの分野の環境教育とレクリエーションは、地域コミュニティの団結を強め、人間の幸福を高めること。分野横断的なプラットフォームを確立することで、責任ある生産と消費(例:参加型保証制度)や、経済推進力にSDGsの追求を促すグリーン生産チェーンが円滑になること。」を明らかにしました。

 本ケーススタディの詳細はこちら(英語)をご覧ください。

 本ニュースレターで共有を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。

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SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局
国際連合大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)

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電話:03-5467-1212(代表)
E-mail: isi@unu.edu

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