IPSIニュースレター 2021年7月号

2021.07.28

 盛夏の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。東京では、1年の延期を経て、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催中です。国際協力を通じて、より良い世界に向けた平和と持続可能な開発を願っています。
 さて、20217月号のIPSIニュースレターをお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。

1.新規IPSIメンバーと新規IPSI協力活動の紹介

 この度、IPSI運営委員会は、IPSIメンバーとして新たに8団体の加入を承認しました。これにより、IPSIメンバーは合計で279団体となりました。新規メンバーは以下のとおりです。

1.
 公益財団法人イオン環境財団(AEON Environmental Foundation)【NGO/市民団体、日本】
2.
 新北市政府農業局(Agriculture Department, New Taipei City Government)【政府機関、(省庁)、台湾】
3.
 バック・トゥ・ネイチャー(Back to Nature)【企業、ネパール】
4.
 ブータン生態協会(Bhutan Ecological Society)【NGO/市民団体、ブータン】
5.
 環境と農村開発財団(Environment and Rural Development Foundation (ERuDeF) )【NGO/市民団体、カメルーン】
6.
 ERuDeF大学 応用生物多様性科学研究所(ERuDeF University Institute of Applied Biodiversity Sciences)【大学教育/研究所、カメルーン】
7.
 環境保護と持続可能な開発研究所(Institute of Ecology and Sustainable Development)【大学教育/研究所、ロシア】
8.
 台湾野鳥連合会(Taiwan Wild Bird Federation)【NGO/市民団体、台湾】

 今後も新メンバーを始め、IPSIメンバーの皆様と緊密に連携しながら、IPSIの更なる発展と、SATOYAMAイニシアティブの概念を推進して参りたいと思います。

 また、IPSI運営委員会は、2団体以上のIPSIメンバーが協働して実施するIPSI協力活動として、新たに1件を承認し、IPSI協力活動は計53件となりました。新規協力活動は次のとおりです。

生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)へのランドスケープ・アプローチの適用に関するマニュアルの作成(Development of a manual on application of landscape approaches to National Biodiversity Strategy and Action Plans (NBSAPs)) 
実施団体:国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)地球環境戦略研究機関(IGES)生物多様性条約事務局(SCBD)

 IPSIメンバーで、新たな協力活動の提案をご希望される場合は、IPSI事務局までご連絡ください。

2.国連ハイレベル政治フォーラムにおけるオンライン・サイドイベント

 2021年79日、2021年の国連持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)において、オンライン・サイドイベント「Healthy Planet, Healthy People: The Role of the Satoyama Initiative for Green & Blue Recovery」が開催されました。本イベントでは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックからの「より良い復興(build back better)」を目指す上でのSATOYAMAイニシアティブの役割を模索し、グリーンリカバリーとブルーリカバリーの必要性が強調されました。講演者は、COVID-19のパンデミックは生活のあらゆる側面に影響を及ぼしていますが、その解決策は私たちの周りの自然の中にあるということを重要なメッセージとして、繰り返し述べました。

 本イベントは、
生物多様性条約事務局(SCBD)が、日本国環境省国連開発計画(UNDP)地球環境ファシリティ小規模融資プログラム(GEF SGP)地球環境戦略研究機関(IGES)、並びに国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)と共催しました。

 本イベントの詳細は、
こちらから、録画映像はこちら(英語)からご覧いただけます。

3.IPSIケーススタディワークショップ(オンライン)開催報告

 IPSI事務局(UNU-IAS)は、2021年6月28日から30日まで、SATOYAMAイニシアティブ主題レビュー(Satoyama Initiative Thematic Review, SITR)第7巻の作成プロセスの一環として、執筆者向けのオンラインワークショップを開催しました。本年度のテーマは、「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の管理における生物多様性、健康、持続可能な開発の相互関係(Nexus among biodiversity, health, and sustainable development in managing socio-ecological production landscapes and seascapes(SEPLS))」です。本ワークショップでは、SEPLSの管理を通して、生物多様性の保全だけではなく、人間や生態系の健康にまで多様な利益をもたらし、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に多大な貢献をするための方法について協議しました。参加者は、IPSIのケーススタディを参考にしながら、このテーマに関する知見を共有しました。

 ケーススタディ11件と、全体の総括を掲載するSITR第7巻は、来年初頭に出版予定です。本ワークショップの詳細は、こちら(英語)をご覧ください。

4. COMDEKSフェーズ3について

 SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)は、国連開発計画(UNDP)がその他協力機関と共に、SATOYAMAイニシアティブの概念を活用し、持続可能な開発のための地域社会の活動を支援するために2011年から実施しているIPSI協力活動です。

 今回、UNDPよりCOMDEKSの最新情報を以下のとおり共有いただきました。

 生物多様性条約事務局(SCBD)、国連開発計画(UNDP)、日本環境省(MOEJ)は、2019年、「SATOYAMAイニシアティブのためのコミュニティ開発と知識管理(Community Development and Knowledge Management for the Satoyama Initiative)」プロジェクトを2020〜2021年にかけて、フェーズ3として継続することに合意しました。COMDEKSフェーズ3では、SEPLSの制度的および財政的持続可能性の確保に焦点を当てています。これまでの2つのフェーズを踏襲し、COMDEKSフェーズ3には、フェーズ1およびフェーズ2の参加国から10ヵ国(ブータン、カンボジア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、ガーナ、フィジー、モンゴル、ニジェール、トルコ)が参加しています。

 2018年11月にエジプトで開催されたCBD COP14において、保護地域や保全地域に関する公式報告の一環として、締結国が保護地域以外の地域をベースとする生物多様性保全手段(OECM)に関する定義とガイダンスを承認しました。これを受けて、COMDEKSフェーズ3では、SEPLSをOECMとして登録する可能性を検討する取組も含まれています。COMDEKSフェーズ1、2を踏まえ、フェーズ3では、SEPLSを保全するためのアプローチの持続性と拡張の促進に主眼を置くことが合意され、これには次の内容が含まれます。「(a)生物多様性の持続可能な利用と、土地・森林・水資源の管理への統合を促進する(COP12決定書XII/18)、(b)生物多様性に関する食糧・農業の持続可能性の概念について更なるガイダンスを提供し、締約国間において関連情報の共有および技術移転の支援を促進・強化する(COP13決定書XIII/3)、(c)必要に応じて、これらのSEPLSを他の効果的な地域ベースの保全手段として制度化する(COP14決定書XIV/8)」。

 COVID-19のパンデミックや、2021年後半に中国の昆明で開催される予定だったCBD COP15の延期の可能性により、本プロジェクトは2022年初頭まで延長されましたが、COMDEKSフェーズ3ではこれまで、SEPLSの持続可能性と最優良事例に関する、国家/準国家のバーチャルおよび対面式のハイブリッド政策対話を開催し、活発な知識共有を促進することが出来ました。COMDEKSフェーズ3の実施から得られた教訓は、UNDP、IPSI、その他地球環境ファシリティ小規模融資プログラムに参加する127の国別プログラムのグローバル・ネットワークを通じて、広く普及される予定です。

5. 新刊紹介:「Social-Ecological Systems (SES): From Risks and Insecurity to Viability and Resilience」

 IPSI事務局のヒマンガナ・グプタ博士(JSPS-UNUポスドクフェロー)が共著した書籍Social-Ecological Systems (SES): From Risks and Insecurity to Viability and Resilience」が発刊されました。本書は、社会生態系(SES)間の学際的な議論に貢献するため、その相互作用の性質の再考を試みたもので、多くの章が、現在のSESを脅かすリスクの力学への考察、あるいは、そのようなリスクや関連する負の影響を管理するための思考プロセスについて述べています。SESの脆弱性の主要因を分析し、SESの持続可能性と回復力を高めるために必要なシフトとして本書で主に強調されているのは、ガバナンスフレームワークの統合と再構築、消費主義に基づく従来のモデルから脱却した生産・消費システムの再編成、コベネフィットの観点からの緩和、適応、SDGsの実施策の策定、適切なアプローチとパラダイムの検討、対応メカニズムの精緻化と実施などです。

Springer、Chamによる本書の電子書籍版はこちら(英語)をご覧ください。

6.SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)2021募集中

 SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)の事務局は、2021年SDMプロジェクトを募集しています。SDMはIPSI下での取組を促進させていくため、IGES、日本国環境省、UNU-IAS(IPSI事務局)が共同で2013年に設立したIPSI協力活動です。毎年、選定されたIPSIメンバーに対し、現場プロジェクト、会議やワークショップ、研究活動などのために、10,000ドルを上限とした助成金を提供しています。応募の締切りは、2021812です。

 詳細については、こちらからご覧いただけます。応募に関するご質問は、SDM事務局(sdm@iges.or.jp)に直接お問い合わせください。なお、SDMの募集はIPSIメンバーのみを対象としています。

7. ケーススタディ紹介: 行政院農業委員会水産試験所

 今月は、IPSIメンバーである台湾の行政院農業委員会水産試験所(FRI)のケーススタディ「Satoumi areas and networks in Taiwan: the integrity and connection among forests, rivers, human settlement and seas」をご紹介します。

 本事例は、(1)下流域や沿岸地域における特定の社会生態系の中で、調和のとれた状態を実現するために、コミュニティと生態系の統合を促進すること(2)漁村の持続可能な開発を促進する社会資本を創出することを目指して、台湾の沿岸地域における里海の取組を推進しています。FRIは、台湾全土28の里海候補地を調査し、地元の人々や漁業者と共に、漁業や環境教育における市民科学の振興に努めました。

 FRIによると、地域住民に里海の環境教育や市民科学講座を導入したことで、住民の海洋環境への意識が高まり、予防措置が取られるようになりました。また、海洋資源や漁業管理に関する知識を習得する実践的手法を提供することで、地域住民による継続的な里海やその漁業文化、地域の生態学的知識、および関連する生態系サービスに関する取組が促進されました。そして、地域住民の里海関連の活動への参加が実現するようになりました。

 里海という現場の研究から得られた地域の経験は、実現可能な推進基準やガイドラインにまで発展し、台湾全土の里海教育・研究ネットワークの基礎として活用されます。持続可能な概念を通じた里海の発展は、台湾の沿岸漁業コミュニティの活性化と発展のきっかけになると期待されています。FRIは、この手法を他の漁村や沿岸生態系にも拡大していく予定です。

 本ケーススタディの詳細はこちら(英語)をご覧ください。

 本ニュースレターで配信を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。

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SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局
国際連合大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)

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電話:03-5467-1212(代表)
E-mail: isi@unu.edu

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