2022年12月7日、モントリオールで開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP 15)にて、IPSIの創設10年を記念するサイドイベントを開催しました。本イベントでは、これまでの成果や将来の優先分野について議論し、パートナーシップの活動と成果をまとめた「IPSI 10年報告書2010–2022」 の発表も行いました。本イベントは、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、日本国環境省(MOEJ)、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、国連開発計画(UNDP)、CBD事務局、アジア開発銀行(ADB)、IPSIの共催で行われました。
開会挨拶で、渡辺綱男IPSI事務局長は、IPSI発足後の12年間で、パートナーシップ加盟団体は51から292に増加し、世界中でSATOYAMAイニシアティブが推進されていることを強調しました。社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ (SEPLS) に関する251のケーススタディおよび58の協力活動が加盟団体によって実施され、持続可能性に関する豊かで多様な研究成果が生まれました。
続いて、環境省野生生物課の中澤圭一課長、IPSI運営委員会のアルフレッド・オテン・イェボア議長、IGESの武内和彦理事長、CBD事務局の鈴木渉グローバルコーディネーターが登壇し、IPSIが愛知目標やSDGsの進展を促すような持続可能な生物多様性管理を推進してきたことに対して、祝辞が述べられました。
柳谷牧子IPSI事務局次長は、SEPLS管理と優良事例に関するケーススタディを掲載した年次刊行物であるSATOYAMA イニシアティブ主題レビューと、生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)にランドスケープアプローチを適用するためのマニュアル作成に焦点を当て、IPSIの取り組みの成果について概説しました。また、生態系回復、地域ベースの保全対策、政策と能力開発、SEPLSを支援する市場メカニズムの構築など、新たなIPSI行動計画の潜在的な優先分野も示しました。ADBの環境スペシャリストであるユエユ・ゾウ氏は、アジア太平洋地域における環境の持続可能性を高めるための機会とイノベーションを促進する目的で、ADBが最近IPSIへの加盟を申請したことに言及しました。
コンサベーション・インターナショナル のウィリアム・ダンバー プロジェクトマネージャーは、ランドスケープ管理に長年取り組んできた経験から得られた知見をまとめ、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECMs)の認定と実施に適用することを目的としたUNU-IASとコンサベーション・インターナショナルの共同プロジェクトについて紹介しました。
パネルディスカッションでは、いかにIPSIが多様な組織に対して協働の機会を提供するかに焦点を当て、フォレスト・ピープルズ・プログラムのマウリツィオ・フェラーリ氏、UNDP地域環境ファシリティ小規模無償プログラム(GEF-SGP)の生物多様性のためのプログラム・アドバイザーであるテレンス・ヘイ・エディ氏、カンボジア王国環境省のソマリー・チャン次長が議論を交わしました。登壇者たちは、SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)とSATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)が地域の取り組みを開始または支援するために重要なシードファンドを提供していることに触れ、それらの地域や先住民コミュニティへの財政支援の役割を強調しました。さらに、SATOYAMAイニシアティブがポスト2020生物多様性枠組に貢献できることも強調しました。