2013年7月23-24日に横浜で開催された第5回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2013)において、「グリーン経済とSATOYAMAイニシアティブ:地域レベルにおけるレジリエントな社会の構築」と題してパラレル・セッションが開催されました。
セッションはクリシュナ・チャンドラ・パウデル氏(ネパール政府水とエネルギー委員会委員長)と、渡辺陽子氏(地球環境ファシリティ・生物多様性上級専門家)がモデレーターを務めました。
ザクリ氏(マレーシア首相科学顧問、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム議長)の基調講演では、グリーン・エコノミーやアジア太平洋地域の生物多様性や文化の多様性における日本のリーダーシップの役割について強調し、生物多様性だけではなく、穀物や家畜も減少の危機にある状況を踏まえて「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が設立された背景と、その期待される機能について説明を加えました。ザクリ氏は多岐に渡る学問分野や知識システムを統合し政策に反映するためには更なる努力が必要だと述べ、生物多様性や生態系サービスへの評価に対する課題についてIPBESで議論されることへの期待や議論を深化させることについての関係者からの貢献への期待を強調しました。
武内和彦氏(国連大学上級副学長)からの基調講演では、グリーン・エコノミー、レジリエンス、SATOYAMAイニシアティブとパートナーシップ(IPSI)の関連性に焦点をあて、ブラジルの農林業や中国雲南省の伝統的な茶林を、環境に配慮したレジリエントなシステムであり経済的価値を高める事例として紹介しました。武内氏はまた、レジリエンスの強化、新しいコモンズの確立と新しいビジネスモデルを確立することが社会的・生態学的に信頼性や生産性の高い活動を達成するために必要だとし、SATOYAMAイニシアティブの役割が持続可能な成果に貢献しうると強調しました。
次に、古田尚也氏(国際自然保護連合:IUCN)は、生態系に基づいた災害のリスク減少対策の国際的取り組みについて紹介し、自然災害が増加しても災害による死者の数は減少しており、一方で経済的な損失は急激に増加していることが、持続可能な発展を自然災害が阻害していると捉えられる要因だと述べました。古田氏は水害対策に湿地を利用する例や砂丘の安定のための造林についての事例を紹介し、生態系に基づいた災害のリスク減少対策は有効な対策となることや適切に保全された里山が日本の優良事例になりうることを指摘しました。
三笠礼子氏(豊岡市)は、コウノトリを呼び戻すための豊岡市の活動成果について発表を行い、有機農法や魚の復活など鳥にとって適切な環境を整備することがコウノトリの復活につながったことや、結果としてこうした行動が住民の環境への意識向上や安全な農作物や穀物の生産にもつながったことについて強調した。
基調講演、事例紹介に続いて質疑応答が設けられ、SATOYAMAの概念と東北復興の努力や、SATOYAMAの認証システムについての質問等、多岐に渡る議論が続きました。