2022年12月12日、IPSI事務局を務める国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、モントリオールで国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP 15)の一環として開催された自然と文化サミットの2つのセッションに貢献しました。
第1セッション「科学と知識対話に基づく行動と生物文化指標」では、科学的知識システムと伝統的知識システム間において生物多様性の保全と持続可能な利用に関する価値観、経験、方法、結果の共有を促進することの重要性が議論されました。
登壇者は、自然・文化・健康・人権が相互に関連していることを強調しました。世界的な生物多様性の危機は、最も脆弱で社会から取り残された人々が主に影響を受ける人権の危機でもあります。社会変革を促進し、説明責任を確保し、先住民と地域社会(IPLCs)を参画させるために、人権に基づいたアプローチが「ポスト2020生物多様性枠組(GBF)」の実施に組み込まれるべきであることが強調されました。自然保護は、歌や物語、ダンスなどIPLCsの文化から織りなされるものであるため、登壇者らは、芸術が科学をより理解しやすく、親しみやすいものにするのに役立つと結論づけました。
UNU-IASのスニータ・サブラマニアンリサーチフェローは、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の『自然の多様な価値と評価に関する評価報告書』の著者の一人である自身の経験に触れ、自然に対する見識と理解が、私たちの自然への接し方に影響を与えると強調しました。社会と自然との調和のとれた関係の構築には、様々な視点を考慮することが重要です。
第2セッション「コミュニケーション・教育・啓発への新たなアプローチ」では、あらゆる分野を超えて生物と文化の多様性間の相互関係への認識を高めるための啓発的行動が模索されました。
パネルディスカッションでは、コミュニケーションと教育を通じていかに自然に対する保護と配慮の文化を創造するかということに焦点が当てられました。登壇者は、生物多様性の様々な価値を伝えることがGBFにとって極めて重要であると指摘しました。しかし、行動を変化させるためには地域レベルでのさらなる議論が求められます。多くのIPLCsは従来型のコミュニケーション手段にアクセスできないため、情報資料が彼らのもとに届くよう改善されなければなりません。
UNU-IASの西麻衣子リサーチフェローは、地域社会が強みと弱みをより深く理解し、回復力(レジリエンス)を向上させるための戦略策定を支援することを目的とした、「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)におけるレジリエンス指標ツールキット(手引き)」について紹介しました。本ツールキットで提示されている手法は、IPLCsからNGOや各国政府に至るまで、すべての利害関係者の参画を確保するべく参加型に設計されており、指標を生物多様性の適応性と持続可能な共同管理を推進するための、地域コミュニティ内外におけるコミュニケーションツールとしています。