IPSIニュースレター2020年4月号

2020.04.29

IPSIニュースレター2020年4月号(日本語版)IPSI事務局からのメッセージ、SEPLSのレジリエンス指標に関する論文紹介、国際生物多様性の日、他

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。2020年4月号のIPSIニュースレターを特別メッセージと共にお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。



1.新型コロナウイルス感染拡大に伴うIPSI事務局からのメッセージ

 

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、人々の生活に多大な影響が生じている今、IPSI事務局として、読者の皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。皆様の健康と暮らしに大きな被害が及ばないことを願っております。
 IPSI事務局では、在宅勤務が2か月目に突入し、未だ先行きの見通せない状況が続いておりますが、「ソーシャルディスタンス」にいち早く対応し、スタッフの間に感染者が出ていないことは幸いです。この困難な時期をともに乗り越えるために、皆様にも各々の立場で政府・自治体の指導に従っていただくよう、強くお願いいたします。距離を保ち、手を洗い、外出を控え、必要に応じてマスクをしましょう。皆様が一丸となって協力することで、大切な人を守ることにもつながります。
 その一方、流行収束後の動きにも目を向けていく必要があります。世界中が停止状態の中で、当初予定されていたポスト2020生物多様性枠組へのIPSI事務局の貢献は、足踏み状態を余儀なくされていますが、転換期の今だからこそ、2020年以降、そしてパンデミック(世界的な大流行)収束以降、私たちがどのような世界を望むのかについて、真剣に向き合う必要があります。これまで何度も指摘されてきましたが、生物多様性に対して「これまでどおり」のアプローチでは野心的な目標は達成できません。2020年以降は「社会変革(Transformative Change)」が求められます。これまでどおりの取組が、将来的にパンデミックを防ぎ、地球を安全で持続的で、かつ回復力のある状態に保つことにつながるのか、あるいは、世界が一丸となって今回のパンデミックから教訓を得て、より強力な取組を行っていくべきか、答えは明白でしょう。

 社会変革の考え方の一つは、社会のあらゆる分野において生物多様性を主流化するために、より広範な社会的・文化的・経済的要素を取り込むことを意味します。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、単純な生物学上の問題にとどまらず、前例のない速さで進む生態系の破壊、持続可能でない生物多様性の利用及び生産・供給体制など、現代社会・文化・経済システムのあり方にも起因しています。そして、今回の危機が、現行のシステムにおける回復力の欠如を浮き彫りにしたとも言えます。問題は、現状を改善するために私たちがいかに行動するかです。

 皆様がご存じのように、ランドスケープアプローチは、長期的に持続可能で回復力のある社会生態学的システムを構築するために、すべての利害関係者の協働を基本としています。IPSIのケーススタディでは、ランドスケープ・シースケープが適切に管理され、真の「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ」が達成された場合、自然環境と人間社会、そして生態系サービスは、より回復力があり、かつ、人間と自然に必要な利益を伴いながら、自然と調和している状態となることが示されています。これがまさにパンデミックから回復するために必要な社会変革であり、世界の回復のための重要な要素となりうるのではないでしょうか。

まずは、一人ひとりが自身の安全と健康に努める必要がありますが、長期的には、IPSI事務局として、今後も持続可能なランドスケープ・シースケープの発展に向け、積極的に活動していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

 皆様、どうぞ健康には十分ご留意くださいませ。

 IPSI事務局スタッフ一同



2.比較国際教育学会(
CIES)でのIPSI事務局スタッフによる遠隔セッション


 本年3月に米国フロリダ州マイアミにて開催予定であった第64回比較・国際教育学会(Comparative and International Education Society: CIES) は、新型コロナウイルス感染拡大により、初のオンライン開催となりました。4月8日には、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)が、UNESCOバンコク事務所及びUNESCO生涯学習研究所と共同でオンラインセッションを実施し、瀧口博明IPSI事務局長が持続可能な開発のための教育(ESD)を中心としたマルチステークホルダー・アプローチについて、イヴォーン・ユー研究員がSATOYAMAイニシアティブについて発表しました。

 本セッションの詳細はこちらをご覧ください。

 


3.
論文紹介:保全管理に対する生物文化的アプローチについて

 

 IPSIメンバーである台湾の国立東華大学の研究者らによる論文が、学術誌「Sustainability」に掲載されました。本論文は、IPSIに関連する多くの資料、とりわけIPSI協力活動を通じて開発された「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)におけるレジリエンス指標」について取り上げています。

本論文によれば、地域住民や先住民は、世界中の生物多様性の管理に重要な役割を果たしており、SEPLSにおけるレジリエンス(回復力)評価の実施は、その地域における人間と自然の持続的な相互作用のために必要不可欠であると述べられています。また、保全管理に対する生物文化的アプローチとして、レジリエンス評価ワークショップ(RAW)の適用性についても分析しています。その結果、コミュニティの主な懸念事項や行動計画の修正・調整が、生物多様性を基盤とした生活、伝統的知識の継承、共有資源の持続可能な利用と関係していることも明らかになりました。そして、本アプローチが台湾中部Xinsheの SEPLSにおいて、生物多様性および豊かな暮らしを実現するための自然に基づく解決策促進に役立つ可能性が高いと結論づけています。

 本論文はこちら(英文)からご覧いただけます。

 

 

4.国際生物多様性の日(5月22日)


 今年の国際生物多様性の日のテーマは、「解決策は自然の中に(Our Solutions are in Nature)」です。今年はすべてのイベントが初めてオンラインで開催されますが、生物多様性条約(CBD)事務局は、生物多様性に関する活動に取り組む世界中の人々にビデオ映像や資料の提供を呼び掛けています。

一人ひとりが生物多様性の重要性を考え、国際社会の関心と連携を高めるための良い機会です。皆さまに共有いただける活動成果がある方は、ぜひIPSI事務局にご連絡ください。

 詳細はこちら(英文)をご覧ください。



5.ケーススタディ紹介:トウモロコシとSEPLの関係(メキシコ・生命の種財団)


 メキシコを拠点とするIPSIパートナーの「生命の種財団(Fundación Semillas de Vida, A.C.)」によれば、同国では、トウモロコシは主食であり、ランドスケープの核となる作物です。農業および文明全体がトウモロコシを中心に築かれてきました。そのため、先住民の世界観や自然との関係を理解する上で、トウモロコシの文化的側面を知ることは重要です。同財団は、地域住民やベラクルス国際大学の関係者らと協力して、トウモロコシの種の多様性、利用、活用方法に関する知見や調査を行うと共に、多様性や気候変動の適応等に関する小規模農家の知恵を収集・分析し、社会生態学的生産ランドスケープ(SEPL)の利害関係者が、ランドスケープや資源利用等に関して、どのように異なる展望を持っているかを明らかにしました。

 本ケーススタディはSATOYAMAイニシアティブ主題レビュー(SITR)第5巻に掲載されています。詳細は、こちら(英文)をご覧ください。

 なお、本ニュースレターで共有を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。


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SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局

国際連合大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)

東京都渋谷区神宮前5-53-70

電話:03-5467-1212(代表)

E-mail: isi@unu.edu

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