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IPSIニュースレター2020年5月号
2020.05.29
IPSIニュースレター2020年5月号(日本語版)【国際生物多様性の日、SDMプロポーザル募集の事前告知、論文紹介、他】
依然として、新型コロナウイルス感染症への不安は尽きませんが、皆様いかがお過ごしでしょうか。2020年5月号のIPSIニュースレターをお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。
1.国際生物多様性の日
5月22日の「国際生物多様性の日」に合わせ、先週(5月18日~22日)は「生物多様性週間」でした。今年のテーマ「解決の鍵は自然の中に(Our Solutions are in Nature)」を踏まえ、生物多様性条約(CBD)事務局は、「自然に基づく解決策は、気候変動の緩和と不可避な影響への適応に、迅速で費用対効果の高い利益をもたらす」「生物多様性と生態系は、気候変動への世界的な対応を強化する上で重要な役割を果たすとともに、様々な利益をもたらす。自然及び生態系のより良い保護、管理及び回復は、人為的な気候変動の緩和に大きく貢献することができる。」とメッセージを発表しています。ここで挙げる「自然に基づく解決策」には、森林破壊の減少や土地利用変化・劣化の防止、荒廃した土地や生態系の再生、農地や放牧地の土壌管理の強化が含まれます。
今年は新型コロナウイルスの世界的大流行の影響で、ほとんどのイベントがオンライン開催となり、IPSIメンバーやその関係者らによって企画・実施されたものも数多くありました。自然に基づく解決策が、レジリエント(強靭)なコミュニティとランドスケープの創造及び気候変動の脅威に対する緩和と適応の向上に役立つ方策である一方、SATOYAMAイニシアティブの観点からは、自然の多様な価値観や持続可能な生活など、IPSIの活動を通して明らかになった生物多様性や人間の福利に対するランドスケープアプローチの利益も忘れてはなりません。「国際生物多様性の日」のような節目は、私たちがいかに自然と調和しながら生活していけるか再考する機会となります。読者の皆様も関連する活動やイベント等ございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。
2. 事前告知:SATOYAMA 保全支援メカニズム(SDM)2020事業プロポーザルの募集
SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)は、IPSI協力活動として2013年に公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、環境省(MOEJ)、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)が共同で設立しました。SDMでは、毎年IPSIメンバーからのプロジェクト公募を行い、採択したプロジェクトに対して1件あたり最大1万米ドルの資金協力を行っています。2020年のSDMプロジェクト公募に向けて、SDM事務局では現在準備を進めていて、近く詳細をお知らせできる見込みです。メール・ニュースレター・IPSIウェブサイト・SDMウェブサイト(英語)にてお知らせしますので、ふるってご応募ください。
3.論文紹介:中国南西部の農村におけるSEPLSのレジリエンス評価
IPSI協力活動を通じて開発された「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)におけるレジリエンス指標」を用いた研究が、学術誌Sustainabilityに掲載されました。
本論文によれば、2018年に中国南西部の雲南省西双版納(シーサンパンナ)ヤヌオ村で開催された参加型「評価ワークショップ」において、地域のレジリエンスに不可欠な社会生態学的プロセスの議論と分析枠組みを提供するため、SEPLSにおけるレジリエンス指標ツールが用いられました。本ワークショップは、地域住民と外部の研究者らにより共同で企画・実施され、スコアリングプロセスを含む議論では、どのような要素がランドスケープのレジリエンスに影響を与えているとコミュニティが感じているのかを探るため20の指標が用いられました。これらの指標は、レジリエンスの現状と改善の余地がどこにあるのかを議論するための枠組みも提供し、主な結果として、既存のコミュニティ管理アプローチには、コミュニティの生計と福利に影響を与える要因として伝統的知識の喪失が反映されていないことが明らかになりました。これを受けて、若者が伝統的な知識を継承し、積極的に活用する仕組みが必要であり、経済活動にも取り入れていくことが合意されました。加えて、地域社会の社会経済インフラの更なる改善の必要性も明らかになりました。ヤヌオ村におけるこのコミュニティ管理評価枠組みは、政策立案者やNGO、開発機関などの利害関係者により、同様の社会経済環境を持つ熱帯山岳地域の他のコミュニティへの拡大が可能と述べられています。
本論文はこちら(英文)からご覧いただけます。
4.ケーススタディ紹介:コンサベーション・アライアンス・インターナショナル
ガーナを拠点とするIPSIパートナーの「コンサベーション・アライアンス・インターナショナル(Conservation Alliance International)」は、ガーナ西部のコミュニティ資源管理地域(Community Resource Management Areas: CREMA)において、コミュニティの特長を活かした天然資源管理に関する活動を行っています。同団体によれば、同国の天然資源管理は、これまでいくつかの段階を経てきました。植民地時代以前は、天然資源保護のため、指導者と地域住民とがタブーや規範、慣習などを用いた管理方法を考案してきました。これらの伝統的な慣行に従うことは、資源の長期的保全と経済安全保障の確保を意味しましたが、植民地時代や独立時にはもはや受け入れられませんでした。その後、政府が採用した天然資源の保護地域管理アプローチは、生物多様性の損失につながったため、同国政府は、資源ガバナンスにおけるコミュニティ関与の重要性を認識し、共有資源を共同で管理するためのCREMA を設立しました。CREMAは、コミュニティ参加により、天然資源の価値を大切にしながらその持続的な管理を行うための最も効果的な方法であることが示されています。CREMAの機能を維持するためには、様々な利害関係者のニーズに対応する確固たる経営戦略が必要であり、コンサベーション・アライアンス・インターナショナルは、CREMAの管理を支援するために、利害関係者のニーズを把握するための調査を実施しました。
本ケーススタディはSATOYAMAイニシアティブ主題レビュー(SITR)第5巻に掲載されています。詳細は、こちら(英文)をご覧ください。
なお、本ニュースレターで共有を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。
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SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局
国際連合大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)
東京都渋谷区神宮前5-53-70
電話:03-5467-1212(代表)
E-mail: isi@unu.edu
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