社会生態学的レジリエンスのためのランドスケープ・アプローチ

2024.12.16

Photo: UNU-EHS
Photo: UNU-EHS

2024年12月10日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)はサウジアラビアのリヤドで開催された国連砂漠化対処条約第16回締約国会議(UNCCD COP16)にてサイドイベントを共催しました。本イベントでは、革新的な土地と水管理のへの戦略を基に、生産、開発および保全それぞれの目標の関連性について検討しました。また、統合的ランドスケープアプローチが社会生態学的レジリエンスの促進にどのような役割を果たすかについても議論しました。

国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)Lisa Hartman研究員は、レポート「持続可能な土地管理及び土地劣化の中立性のための土地及び水管理アプローチの貢献」(英題:The Contribution of Land and Water Management Approaches to Sustainable Land Management and Land Degradation Neutrality)を紹介しました。このレポートでは、7件の土地、水管理アプローチの整合性を評価しています。課題解決への入り口も明記し、UNCCD締約国が土地と水管理に関するプロジェクトを計画、評価する際のガイダンスを提供しています。

UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員(IPSI 事務局)は、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)を紹介しました。また、ランドスケープ・アプローチが、環境、社会および経済的ニーズのバランスを取りつつ、自然資源と生物多様性をどのように統合的に管理しているか説明しました。さらに、ランドスケープ・アプローチが、そのランドスケープに関係する多様なステークホルダーを巻き込むことで包括的ガバナンスを促進しており、社会生態学的レジリエンス実現のための有効な手段となり得ることに言及しました。UNU-IASはIPSIを通じて、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)に関する研究を行っており、ランドスケープ・アプローチを生物多様性国家戦略及び行動計画に取り入れるためのガイドや、コミュニティのニーズを満たすために、生物物理学的かつ社会的な側面を統合をもたらすSEPLSにおけるレジリエンスの指標などのツールを作成しています。

双方向形式のディスカッションでは、ランドスケープレベルの社会生態学的レジリエンスへのシステムアプローチの実際の運用と課題解決について、意見交換が行われました。参加者は社会生態学的システムアプローチの促進や実施における課題、またこれらの課題に対処するために必要な資源について考察しました。

Mariaelena Huambachano氏(シラキュース大学 アシスタントプロフェッサー、先住民問題に関する常設フォーラム 代議員・アソシエイトリサーチャー)は、伝統的知識が科学コミュニティに認められた根拠として見なされていないために、政策的な議論から排除されることを指摘しました。また、十分な資金的支援と先住民とのパートナーシップを築き信頼関係を結ぶことの重要性を強調しました。

UNDP GEF小規模無償プログラムRissa Edooパートナーシップスペシャリストは、UNU-IASとの連携で実施されているSATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)を紹介しました。このプログラムは、先住民及び地域社会(IPLCs)や地域コミュニティに関連する団体が持続可能な形でSEPLSを管理し、自然と共存する社会を形成するため、資金的かつ技術的な支援を提供しています。

参加者による議論では、社会生態学的レジリエンスを確保する上でランドスケープ・アプローチの効果を確実なものにし、その効果をモニタリングし評価するためのシステムを実施することの重要性が取り上げられました。EcoAgriculture Partners Thomas Miewaldプログラムディレクターは、協力関係を築き維持していく上での課題について述べました。また、長期的視点や、広いレベルでの課題への対処が必要であり、ランドスケープ・アプローチの運用には地域におけるリーダーシップの能力開発が極めて重要であることを強調しました。

本イベントはUNU-IASがUNU-EHSと共催しました。