2023年10月16日、IPSI事務局を務める国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、ケニアのナイロビで開催された生物多様性条約(CBD)第25回会合科学技術助言補助機関会合(SBSTTA25)にて、サイドイベントを共催しました。本イベントでは、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)と「国連生態系回復の10年」の目標達成に向けた統合的ランドスケープ・アプローチの役割について議論が行われました。
セッションの冒頭、UNU-IAS三宅里奈プログラム・コーディネーターは、生態系の回復に関する政策立案者のための明確なガイドラインを確立することがいかに複雑であるか共有しました。その上で、三宅プログラム・コーディネーターはSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)などの国際的なネットワークが地域の複雑な事情を理解する上で重要な役割を果たしていることを紹介しました。環境省自然環境局生物多様性戦略推進室 鈴木渉室長も研究と政策立案を繋げるためのパートナーシップの必要性を強調しました。
UNU-IAS西麻衣子研究員は、ランドスケープ・アプローチが伝統的な知識と現代科学を組み合わせたものであることを説明しました。ランドスケープ・アプローチを用いて生態学、社会経済的背景を地域における資源管理に取り入れることで、持続可能性、生物多様性と人々の生活の調和が推進されます。
本イベントでは、UNU-IASの新しい書籍『社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の管理による生態系の回復(英題:Ecosystem Restoration through Managing Socio-Ecological Production Landscapes and Seascapes (SEPLS))』 にも取り上げた生態系の回復に関する取り組みの成功例が紹介されました。ア・ロシャ・ガーナ ジャクリーヌ・ムバワインモニタリング、評価、報告マネージャーは、ガーナのモレ生態学的ランドスケープにおける地域コミュニティが森林の再生を通してモグラの生態学的ランドスケープを保護している事例を紹介しました。ファーマーズ・シード・ネットワーク、中国 ユファン・チュアンビジュアルデザイナー兼プログラムスペシャリストは、絶滅危惧種のカブトガニの保護活動を含む、三洋湾の地元漁業者による復元活動を共有しました。
UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員は、生物多様性条約事務局と環境省の支援の下、UNU-IASと地球環境戦略研究機関(IGES)が共同で作成した政策立案者のための新しいガイドブック『Using Landscape Approaches in National Biodiversity Strategy and Action Planning』を紹介しました。CBD 事務局モニカ・コバヤシプログラム・マネージメント・オフィサーは、本書籍の出版を歓迎し、各国政府とランドスケープ・レベルで活動する地方自治体を含む他のステークホルダーとの連携の重要性を強調しました。
パネルディスカッションでは、2030年までに生産ランドスケープ・シースケープを加速させるための洞察が共有されました。パネリストは、地球上の生物多様性を保護するために、効果的な回復方法を採用し、知識と経験の共有を奨励することの重要性を強調しました。
本サイドイベントは、UNU-IAS、IPSIおよび環境省が共催しました。