2022年2月9日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)、および日本環境省(MOEJ)と、里海再生に向けた地域コミュニティによる取組とガバナンスをテーマにしたオンライン・シンポジウムを開催しました。国連生態系回復の10年に関する一連の取組の皮切りとなった本シンポジウムでは、里海の沿岸生態系に焦点を当て、脆弱な沿岸生態系の回復や再生に関する事例を紹介しました。
開会挨拶で、笹川平和財団の角南篤理事長は、本シンポジウムの目的は、生態系再生に向けた人々の意識を高め、取組への関与を促すことであると強調しました。UNU-IASの山口しのぶ所長は、国連生態系回復の10年の公式パートナー機関として、UNU-IASは生態系回復プロジェクトにおいて、これまで構築してきた知見を元にナレッジマネジメントと実地支援に尽力していると述べました。また、沿岸の管理や再生などの戦略的アプローチを通じて人と自然の持続可能な関係を促進するSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の取組との関連を強調しました。
国連環境計画(UNEP)の八代真紀子氏は、「国連生態系回復の10年」の使命は、既存の再生への取組を強化および支援し、リオ条約を執行し、SDGsを推進することであると概説しました。OPRIの前川美湖氏は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が作成した報告書について紹介し、エネルギーの利用可能性と消費の増加が生活の質を改善するだけでなく、気候変動にも寄与することが明らかになったと述べました。UNU-IASのイヴォーン・ユー研究員は、沿岸生態系は、海洋生物に食糧とシェルターを提供していることから、生物多様性のためには沿岸生態系が重要であること。また、内陸の生態系と相互に関連していることを考慮する必要性があることに言及しました。
恩納村漁業協同組合の山城正已氏は、沖縄県恩納村の漁業者が協力して行っている、健康なサンゴを植え付けることによる、サンゴ礁を白化から再生するための取組について紹介しました。南三陸町自然環境活用センターの阿部拓三氏は、宮城県志津川湾で実施されている、地域の子どもたちへの教育を行い、里海の再生に貢献する保全・再生プロジェクトを紹介しました。
Montespertoli Ancient Grains協会のグイド・グアランディ氏は、イタリアのオルベテッロのラグーンでの持続可能な漁業について発表し、獲った魚を需要があるまでラグーンで生かしておくことによって、乱獲を防ぎ、里海の再生に貢献していることを説明しました。フィリピン大学ロスバニョス校のディクソン・ゲバナ氏は、放棄された養殖場をマングローブ林に再生することにより、洪水リスクを減らしたというフィリピンのアリータス地域の取組について紹介しました。UNU-IASの渡辺綱男シニアプログラムコーディネーターが司会を務めるパネルディスカッションでは、パネリストは、海洋生物多様性を保護し、気候変動を緩和するために、地域コミュニティと政府間の協力が重要であることを強調しました。また、海洋保全に関する子供たちへの教育プログラム、港の近くでの藻場づくり、水産業と協力したシースケープの管理など、日本政府が実施するさまざまなプロジェクトについて話し合いました。
閉会の挨拶で、環境省自然環境局の奥田直久局長は、森、海、社会はつながっており、国連生態系回復の10年の使命を達成するためには、地域コミュニティで知識を共有し、促進する必要があることを強調しました。
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