2022年4月27日、IPSI事務局を務める国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)における社会的および経済的推進力の理解に焦点を当て、生物多様性と健康、そして人間の幸福(ウェルビーイング)との間の関連性について議論するオンラインセミナーを開催しました。
開会挨拶で、IPSI事務局長の渡辺綱男氏は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックが、健康、安全、自然の相互関連性を浮き彫りにしたことを指摘し、自然資源の持続可能な管理と利用によって、SEPLSが自然の回復に貢献したことを強調しました。IPSI事務局は、2021年に、SEPLSに対するパンデミックの影響を理解し、レジリエンスを強化するために、IPSIメンバーに対してアンケート調査を実施しました。
セッションの第1部は、「健康と生物多様性」に焦点を当て、UNU-IASのパートナーシップ・アソシエイトであるブルーノ・レレス博士が司会を務めました。まずWHOの生物多様性と気候変動と健康プログラムオフィサーであるクリスティーナ・ロマネリ氏が、生物多様性と健康の相互関連に関する知識および課題と機会についての概要を説明しました。同氏は、生物多様性の損失の主要因の多くは、気候変動や健康状態をも悪化させ、新たな感染症の発生にもつながることを指摘しました。また、人間と地球の健康をもたらすメカニズムとして、政策と生物多様性保全とを結びつけることや、人間と文化的多様性が生態系に欠かせない構成要素であることを認識することの必要性を強調しました。
元UNU-IASの研究員であるイヴォーン・ユー博士は、アンケート調査の結果を発表しました。パンデミックは多くの課題をもたらした一方、SEPLSコミュニティでは、地域資源の再評価につながり、より自立して環境と関わっていく契機になったとの結果が報告されました。
台湾・国立東華大学のクアンチュン・リー教授は、東華大学が林務局と共同で行った台湾における統合的ランドスケープ・アプローチの適用とSEPLSの活性化の結果を今後共有することを発表しました。
セッション第2部は、UNU-IASのスニーサ・サブラマニアン研究員が司会を務め、「COVID-19パンデミックからのより良い復興」に焦点が当てられました。ブラジル・サンパウロ州政府インフラ・環境事務局のポール・デール国際問題顧問は、生物圏保護区とSEPLSを比較し、生物圏保護区の中心地域では生物多様性の保護に重きが置かれ、その外側の地域では生産活動や持続可能な開発が行われていると述べました。
フォーレスト・ピープルズ・プログラムの環境ガバナンスシニアポリシーアドバイザーであるマウリツィオ・ファルハン・フェラーリ氏は、パンデミックとそれを抑制するための措置が、先住民族コミュニティにおける不平等を悪化させたと述べました。復興に関わる機関は、先住民族の権利を保護し、彼らの文化的一体性を反映した開発モデルを実施する必要があると述べました。
ケニア森林研究所のチェムク・ウェケサ研究員は、ケニアにおける生物文化遺産地域の推進と、コミュニティ主導のプロセスによる土地統治に焦点を当てたケニアにおける取り組みについて議論しました。
閉会挨拶で、IPSI事務局の柳谷牧子次長は、ランドスケープ・アプローチが、グローバル課題を克服するための総合的な戦略を提供することを強調しました。