2024年10月22日、国際SATOYAMAイニシアティブ(IPSI)事務局は、コロンビア、カリで開催された国連生物多様性条約第16回締約国会議(CBD COP16)にてサイドイベントを共催しました。本イベントでは、ランドスケープ・アプローチがどのように昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実施に貢献するかを議論しました。また、実践的なガイダンスおよびツールを基に、統合的かつ全社会的な戦略を支援するイニシアティブについても紹介しました。国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、IPSIの事務局を務めています。
UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員は、UNU-IASと公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が作成したガイド『Using Landscape Approaches in National Biodiversity Strategy and Action Planning』(生物多様性国家戦略と行動計画におけるランドスケープ・アプローチの活用)を紹介しました。この実践的ガイドブックは、ランドスケープ・アプローチの生物多様性国家戦略(NBSAPs)への統合の推進を目的に作成されました。各国がGBFのゴールおよびターゲットを達成するために、不可欠なガイドです。
本イベントでは、次のようなイニシアティブも紹介されました。科学的エビデンスと伝統的知識を組み合わせることによって保全のためのアプローチをスケールアップすることを目的として企画されている「ACT30」、大規模な包括的ランドスケープマネージメントを推進し地球規模の生物多様性および気候変動の課題に取り組む「1000 Landscapes for 1 Billion People project」などです。続いて、CDP(Carbon Disclosure Project)が、ランドスケープ戦略に関する拡大しつつある取り組みを考察しました。CDPは、ランドスケープ・アプローチへの取り組みを報告した企業数は2020年から2023年にかけて27社から235社へと大幅に増加しており、本傾向は今後も続くことが予想されると共有しました。ユニリーバは、自社の「Action Agenda on Regenerative Landscapes(活力あるランドスケープのアクションアジェンダ)」について発表しました。これは生物多様性を強化、レジリエンス(強靭性)を推進し、社会、経済および環境に関する目標を両立させる土地再生管理の実践に焦点を当てたものです。
パネルディスカッションでは、ランドスケープ・アプローチがどのようにGBFの実施を推進し、より幅広い持続可能なアジェンダに貢献し得るか検討しました。Zakri Abdul Hamid氏(IPBES初代議長、マレーシアUCSI大学International Institute of Science Diplomacy and Sustainability初代所長)は、ランドスケープ・アプローチに関する知見と経験を有する有識者から、生物多様性条約に対してアドバイスを提供するような政策フォーラムの必要性を強調しました。また、IPSIが生物多様性保全とその持続可能な利用について各団体それぞれの経験と考察を共有するプラットフォームを提供していると高く評価しました。