2024年9月10日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、第16回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2024)にてテーマ別会合を共催しました。本会合では、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)がどのように食システムの変革に貢献できるかSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)メンバーによるケーススタディを基に議論しました。本イベントは、公益財団法人地球環境戦略研究機関 (IGES)との共催で行われました。
開会挨拶にて、武内和彦氏(IGES理事長、 UNU-IAS客員教授)は自然と食システムとのつながりを強調しました。また武内氏は、持続可能でない食に関する慣行が、気候変動、生物多様性喪失および汚染など地球規模の極めて重大な課題に影響し、生態系とウェルビーイングを脅かす悪循環を引き起こしていると強調しました。IGES三輪幸司研究員は、IPSIがSEPLSの持続可能な管理および再興を通じて自然共生社会実現を目指す地球規模ネットワークであると紹介しました。本取り組みは生物多様性の保全とその持続可能な利用を生産活動と統合しており、環境や社会のウェルビーイングに向けた食システムの転換に向けたアプローチも提供しています。
シルヴァナ・フリ氏(South American Institute for Resilience and Sustainability Studies(SARAS)リサーチアソシエイト、 ストックホルム大学ストックホルムレジリエンスセンター ポスドク研究員)は、食システム変革についての最新の研究から洞察を共有しました。さらに今後の重点分野として、生物文化多様性、伝統と革新との間のバランスおよびシースケーブから供給される「ブルーフード」の役割を紹介しました。また、これらの重点分野について、SEPLSの研究からさらなる発展が望めるとも述べました。
IPSIメンバーは、食システムにおけるSEPLSアプローチの実践に関するケーススタディを発表しました。台湾農業部林業及自然保育署林華慶署長と根誌優氏(苗栗県賽夏族原住民林業労働有限責任事業協同組合理事長、賽夏(サイシャ)族長老)は、台湾農業部林業及自然保育署と賽夏族の共同プロジェクトについて説明しました。共同での森林管理や環境に配慮した林業開発を通して、賽夏族の暮らしや生態系が向上し、賽夏族にとって文化的にきわめて貴重な絶滅危惧種である植物も回復しています。Fundacion Semillas de Vida, A.C.マリン・ヨンソンディレクターは、伝統的なトウモロコシの品種から作られたトルティーヤへ助成を行い、農民と消費者を直接結び付けるメキシコでの取り組みを紹介しました。本イニシアティブは、とうころこしの品種の多様化を推進し、地域での消費を支援しています。
パネルディスカッションでは、消費者、企業および政策立案者とのパートナーシップの確立と伝統的な慣行へ革新性を調和をすることの必要性が強調されました。また、そのプロセスの中で文化的価値を取り入れることも重要です。
閉会挨拶で環境省鈴木渉生物多様性戦略推進室長は、持続可能な食の生産だけでなく、食システムの変革におけるSEPLSの重要性を強調しました。さらにIPSIが積み重ねている知識が、SEPLESがより広く食システムの戦略へ統合するための貴重な知見に繋がっているとも述べました。
本会議のビデオ録画は、YouTubeよりご覧いただけます。