IPSIニュースレター2020年12月号

2020.12.23

IPSIニュースレター2020年12月号(日本語版)【新規IPSIメンバーの紹介、他】
 
 新型コロナウイルスの感染拡大が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。2020年12月号のIPSIニュースレターをお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。

1.IPSI事務局より年末のご挨拶

 
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、人々の生活に多大なる影響が生じている中、IPSI事務局として、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。2020年は、多くの人にとって困難な年となりました。重要な生物多様性関連のイベントや活動の多くがキャンセル、もしくは遅延となりました。そのような中、SEPLSに関わる全てのIPSIメンバーの活動は継続しています。お陰様でIPSIメンバーは、全世界から271団体を数えるまでになりました。2021年は、生物多様性にとって更に重要な年となるでしょう。IPSI事務局は、今後も皆さまとの連携を密にして、「自然と調和する社会」に向けたランドスケープ・シースケープ・アプローチに関連する様々なプロジェクトや活動に積極的に取り組んで参りたいと思っておりますので、引き続きのご支援とご協力をお願い申し上げます。(IPSI事務局)


2.新規IPSIメンバーの紹介

 2020年12月中旬にオンラインで開催された第15回IPSI運営委員会会合(SC-15)において、新たに4団体の加入が承認され、IPSIメンバーは合計271団体となりました。新規メンバーは以下の通りです。

・ダルハイ(Daluhay)【NGO、フィリピン】
・行政院農業委員会水産試験所(Fisheries Research Institute, Council of Agriculture, Executive Yuan)【政府関係機関、台湾】
・ファーマーズ・シード・ネットワーク(Farmers’ Seed Network)【NGO、中国】
・ナゲナヒル財団(Nagenahiru Foundation)【NGO、スリランカ】

3.イベント「2020 Conference on Biodiversity in Taiwan: Achievements and Future Outlook」開催

 国立台湾大学とIPSIメンバーの行政院農業委員会林務局は、「2020 Conference on Biodiversity in Taiwan: Achievements and Future Outlook」と題したイベントを、2020年11月27~28日、台湾の台北にて開催しました。本イベントには、台湾のIPSIメンバーが多く参加し、愛知目標達成への経験や、今後10年間の生物多様性保全の課題について議論しました。IPSI事務局からは、UNU-IAS研究員のイヴォーン・ユーが「Conceptualizing the multiple values of nature – A Satoyama Initiative Perspective」と題した発表を行い、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)が現在進行中の「自然とその恵みに関する多様な価値観の概念化に関する方法論的評価をはじめとする、自然の多様な価値観の概念化について紹介しました。また、IPSI活動を通じた多様な自然の価値の活用について、SATOYAMAイニシアティブ主題レビュー第五巻「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)における持続可能な利用に関する多様な価値の理解(Understanding the multiple values associated with sustainable use in socio-ecological production landscapes and seascapes (SEPLS)」の成果を例に挙げて説明しました。

 本会議の報告書(中国語)は行政院農業委員会林務局のウェブサイトにて、また録画映像は会議のFacebookページにてご覧いただけます。

4. 新刊のお知らせ:「Role of socio-ecological production landscapes and seascapes in the face of COVID-19 and towards transformative change

IPSIメンバーの公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)とIPSI事務局を運営するUNU-IASは、「Role of socio-ecological production landscapes and seascapes in the face of COVID-19 and towards transformative change」と題された報告書を発表しました。本報告書は、2020年11月に開催された第12回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2020)で、IGESとUNU-IASが共催したセッションの成果物であり、セッションにスピーカーとして参加したIPSIメンバーによる、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行と回復を踏まえたSEPLSに関連する課題についての発言内容も掲載されています。SEPLSを推進することで、コロナウイルスによるパンデミックからより良く回復する方法についての豊富な情報が掲載されていますので、ぜひご一読ください。

 本報告書は、IGESのウェブサイトからダウンロードいただけます。


里山封面 final(B5)完稿_1123

5. 新刊のお知らせ:「Implementing the Satoyama Initiative for the Benefit of Biodiversity and Human Well-Being

 IPSIメンバーである台湾の食糧肥料技術センター(FFTC)が、「Implementing the Satoyama Initiative for the Benefit of Biodiversity and Human Well-Being」というタイトルの本を出版しました。本書は、FFTCの元理事であるKuo-Ching Lin博士とIPSIメンバーである国立東華大学のKuang-Chung Lee博士、およびUNU-IAS研究員のイヴォーン・ユーを含む編集チームによって編集されました。本書は生物多様性、農業、地域に根差した保全など、SATOYAMAイニシアティブの観点から、様々なテーマを取り上げており、著者には数名のIPSIメンバーが名を連ねています。IPSIコミュニティにとって、優れた資料となっていますので、ぜひご一読ください。

 本書は、FFTCのウェブサイトよりダウンロード頂けます。

6. 新ビデオ紹介:「Hydropower, livelihoods, climate and biodiversity nexus in the Indian Himalayan region of Kinnaur

 IPSI事務局スタッフ、かつ国連大学のポスドクフェローであるヒマンガナ・グプタ博士は、水力発電プロジェクトが及ぼすインド・キンナウルの景観への脅威に関するドキュメンタリービデオを発表しました。当該地域は、部族コミュニティが、リンゴ農園と森林の両方を管理しています。それは、生物多様性へ大きく依存している、独特の社会生態学的生産ランドスケープです。しかし、開発上の重要な決定を行う際に、利害関係者の懸念や優先事項が含まれていないことは、この地域の生態学的機能と、景観に由来する様々な機能を破壊しています。本ドキュメンタリーは、短絡的な利益を優先することによって、生物多様性と自然が人々にもたらす直接的な利益が、いかに損なわれてきたかを示しています。また、気候変動の観点や、河川流域の地表面を整えるための無制限で非合理的な建設活動の結果、より激化することが予測される極端現象の影響についても言及しています。

 本ビデオは、こちらよりご覧頂けます。

7. ケーススタディ紹介:環境保護保全団体(EPCO

 今月は、IPSIメンバーであるモーリシャスの環境保護保全団体(EPCO)のケーススタディ「Recognising the local values of coastal wetland biodiversity for sustainable economic and livelihood development at Résidences La Chaux ‘Barachois’, Mauritius」をご紹介します。本ケーススタディは、SATOYAMAイニシアティブ主題レビュー第五巻にも掲載されています。

 モーリシャスの伝統的な海の景観に、バラショア(Barachois)というものがあります。1800年以前のフランス統治下において、魚を集めるために伝統的に使用されていた石垣に囲まれた汽水のラグーンと、それを取り囲むマングローブや海岸林で構成されています。しかし、現在では、そのほとんどが放棄され、廃棄物処理場と化しています。EPCOは、社会経済的、文化的、美的、環境的価値を高め、地域住民の生活を改善し、生物多様性の保全を推進するために、バラショアの海景を復元する試験プロジェクトを開始しました。プロジェクト評価・実施プロセスの一環として、世帯調査とフォーカス・グループ・ディスカッションを行い、バラショアの海景が、対象コミュニティの利害関係者へもたらす複数の価値について調査しました。バラショアの海景が地域社会にもたらす価値を認識したことで、バラショアの復元と、そこでの持続可能な資源管理に対する、幅広い利害関係者のより強いコミットメントを引き出すことができ、結果として地域協力組合の設立に繋がりました。このプロセスは、地域の意思決定能力を向上させ、将来の法制度の整合性確保に貢献することでしょう。

 本ケーススタディの詳細は、こちら(英語)をご覧ください。

 本ニュースレターで共有を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局
国際連合大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)

東京都渋谷区神宮前5-53-70
電話:03-5467-1212(代表)
E-mail: isi@unu.edu

連絡先やメールアドレスに変更があった場合は、事務局までお知らせください。
□当ニュースレターの配信登録はこちら

*SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)は、日本国環境省の支援により運営されています。