IPSIニュースレター 2021年8月号

2021.08.31

残暑の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。2021823日より、生物多様性枠組に関する第3回公開ワーキンググループ(OEWG-3)のオンライン会合が開催されています。IPSI事務局は、会合の成功を祈念するとともに、参加者と協力しながら自然と調和した社会の実現に向け、ランドスケープアプローチや新しい枠組を推進していきたいと考えています。

 さて、20218月号のIPSIニュースレターをお届けします。日本語では概要のみご紹介しておりますので、詳細は本文をご覧ください。

1.【9月7日開催】SEPLS管理の優良事例を紹介するウェビナー

 IPSIメンバーである台湾の行政院農業委員会水土保持局(SWCB)および台湾景観環境協会(TLEA)は、国立中興大学(NCHU)と SATOYAMAイニシアティブの実施に関するオンラインウェビナーを202197日(火)10時~1130(日本時間)に開催します。本ウェビナーでは、多分野のステイクホルダーの協力により推進されてきた台湾におけるSEPLS管理の経験や、台湾中部の柳湖(Liyu)コミュニティのケーススタディに関する洞察や知見を共有します。

 本ウェビナーはGoogle Meetによる配信で一般公開されます。ご興味のある方は下記のリンク先よりご参加いただけます。※本イベントは英語のみでの開催となります。予めご了承ください。

Google Meet
リンク先:https://meet.google.com/rwc-xjsz-yjr (コード:rwc-xjsz-yjr)


ケーススタディの詳細はこちらからご覧ください。

2.【9月5日締切】アルバニア(ブナ川デルタ地帯)における持続可能な社会経済的発展のための小額助成金 提案募集

 アドリア海沿岸に位置するブナ川デルタ地帯は、ラムサール条約登録湿地であり、地域社会や生物多様性にとって非常に重要な湿地帯です。この湿地帯には、コビトウ、ユーラシアカワウソ、キンイロジャッカル、チョウザメなどの希少種や絶滅危惧種が生息しています。健全な湿地がブナ川周辺の作物や家畜の生産、漁業、観光業を支えており、約36,000人の住民の収入源となっています。国際自然保護連合 東欧・中央アジア地域事務所(IUCN ECRO)および「Living Buna」のパートナーは、コミュニティベースの活動を通じて、生態系の回復や農業・観光・漁業の管理に焦点を当て、ブナ川デルタ保護地域の持続可能な社会経済的発展を推進しています。「Living Buna」のパートナーは、この地域の社会経済的発展および生態系の回復に貢献するための助成プロジェクトを募集中です。本助成金の目的は、具体的な取組の支援により、保護地域の生物種や生息地の長期的な保全に貢献することです。
助成対象のプロジェクトは、以下の優先分野の少なくとも1つに取り組むものとします。

 ①  生息地の回復と自然に基づく解決策の適用
(取組例:劣化し断片化した湖畔林の回復、砂丘地帯やその他の生物多様性上重要な生息地の回復、生物多様性に富み、脆弱な沿岸地域/生息地の一覧表の作成など)

 ②  灌漑システムの持続可能性の改善を含む、農業環境および節水奨励案
(取組例:環境に配慮した肥料用コンテナ、灌漑システムの改善、在来の薬用植物の栽培と持続可能な収穫、水質の改善など)

 ③  持続可能な観光開発
(取組例:テーマに沿ったエコフレンドリーなウォーキング・サイクリングコースの開発、地域の最も重要な生息地や種の保全推進、宿泊施設や朝食付き民泊などを含む持続可能なエコツーリズムの提供など)

 ④  持続可能な漁業

(取組例:環境に配慮した養殖場の設立、持続可能な繁殖施設の支援、伝統的かつ環境に配慮した漁業の推進など)

 本助成金についての詳細はこちら(英語)をご覧ください。応募締め切りは2021年9月5日(日)です。

3.台湾(花蓮県鳳林村)におけるコミュニティベースのランドスケープ・ツーリズムに関する記事紹介

 IPSIメンバーである台湾の国立東華大学のKuang-Chung Lee教授とPaulina G. Karimova氏が執筆した論文「From Cultural Landscape to Aspiring Geopark: 15 Years of Community-Based Landscape Tourism in Fengnan Village, Hualien County, Taiwan (2006–2021)」が、Geosciences Journalの特集号に掲載されました。本記事では、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)やSATOYAMAイニシアティブを含む様々な景観の概念を、台湾花蓮県鳳林村の持続可能な景観管理やコミュニティベースの景観観光に適用した例を紹介しています。鳳林村におけるSEPLS管理の取組は、IPSIのケーススタディSDMプロジェクトに基づいて、SATOYAMAイニシアティブ主題レビュー第2巻の中ですでに紹介されていますが、本記事では、この取組を地理保全とジオパーク開発に結び付けた15年間の遡及的分析を掲載しています。

 本記事の詳細はこちら(英語)から、DOIこちら(英語)からご覧いただけます。

4. 生物多様性ガバナンスの変革を促すランドスケープに関するポリシーブリーフ発行

 オランダ環境評価庁(PBL)、ヴァーヘニンゲン開発イノベーションセンター、UNU-IASはポリシーブリーフ「Seizing the landscape opportunity to catalyse transformative biodiversity governance: A contribution to the CBD post-2020 Global Biodiversity Framework」を共同で発行しました。IPSI事務局のイヴォーン・ユー(UNU-IAS研究員)とスニーサ・M・サブラマニアン(UNU-IAS客員研究員)が共同執筆者として参加しています。本ブリーフでは、ランドスケープ・ガバナンスの取り決めとSATOYAMAイニシアティブをはじめとするランドスケープ・イニシアティブが、人と自然にとってより良い成果をもたらすための幹線となることを強調し、地球規模で生物多様性の損失を食い止めるための変革の鍵は、ランドスケープアプローチによってもたらされることを提言しています。SDGs、気候、回復、生物多様性の野望の間にコベネフィットを生み出すため、より多くのランドスケープアクションを誘発するために、ポスト2020生物多様性枠組にランドスケープの観点を盛り込む理論的根拠および必要性を説いています。

 本ブリーフはこちら(英語)から、ダウンロードしていただけます。

5. インド北部(キンナウル)のリンゴ園に対する季節変動の影響と農民の認識についての記事紹介

 IPSI事務局のヒマンガナ・グプタ(JSPS-UNUポスドクフェロー)が共著した論文「MODIS NDVI Multi-Temporal Analysis Confirms Farmer Perceptions on Seasonality Variations Affecting Apple Orchards in Kinnaur, Himachal Pradesh」が、Agriculture誌に掲載されました。本論文は、開発による気候変動と景観変化に直面しているインド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州キンナウルの社会生態学的生産ランドスケープに焦点を当てています。当該地域の最重要作物であるリンゴにこのような変化がどう影響しているかを把握するため、当該地域で最大の建設活動が行われた2004年から2018年までの15年間の季節変動を分析しました。本研究では、2019年11月にキンナウルの7つのリンゴ園を訪問した際に得た現地農民の認識に加え、地理空間的および統計的手法を使用しています。その結果、季節変動が大きく、標高の低い場所では降雪量が減り、リンゴの健全な成育に必要な冷涼時間が減少していることが判明しました。地元農家は早期警報システム、リンゴ作物に対する保険、代替となる生計手段がないため、今後の季節変動への備えが出来ていません。

 本記事はオープンアクセスで、こちら(英語)からご覧いただけます。

6. ケーススタディ紹介: ダルハイ(フィリピン)

 今月は、IPSIメンバーであるフィリピンのダルハイのケーススタディ「Egongot Tribal Development and an NGO as a Catalyst for Sustainability」をご紹介します。

 本ケーススタディでは、先住民族の哲学が地球の持続可能性にどのように貢献しているかを明らかにし、コミュニティベースの能力を確立し、先住民族およびコミュニティ保全地域(ICCA)の管理計画を推進していることが示されています。状況分析からビジョン・ミッション・目標の設定、戦略的計画の策定まで、計画の全プロセスにコミュニティが関与していました。このプロジェクトでは、ダルハイが戦略の策定を支援し、Egongotコミュニティは財政面を含む地域の課題を解決するための実施戦略を学び、部族の発展のためにコミュニティの目標を達成しました。NGOであるダルハイが仲介役として、Dipaculao Egongotコミュニティが、聖地、海洋保護区、伝統的な狩猟区、観光・生産地域などを含む、41,480ヘクタールのEgongot先祖伝来の土地をICCA管理区域として制度化するのを支援したことが、本ケーススタディの特徴です。このプロジェクトの成功は、『先住民族の権利に関するフィリピン国連宣言(UNDRIP)』の実施に直接貢献すると共に、参加者をICCAネットワークにつなげ、将来のプロジェクト資金調達のための支援を集めることも出来ました。このプロジェクトでは、ダルハイとの双方向の学習プロセスを通じて、地域の所有権と文化遺産の評価を向上させました。さらにICCAは、Egongotの知識体系と慣習に焦点を当て、若者が失われつつある文化をどのように受け入れることが出来るかについてのテンプレートを提供しました。本ケーススタディで用いられたアプローチは、ダルハイが先住民族コミュニティと協力して、コミュニティ内でセクターごとの関係を構築する際のモデルとなっており、より多くのICCAを設立するために、フィリピンのアウロラ州における他の先祖伝来の土地でも実施されています。

 本ケーススタディの詳細はこちら(英語)をご覧ください。

7.SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)2021募集終了

SATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)2021年SDMプロジェクトの応募は終了しました。ご応募いただいたIPSIメンバーの皆様、ありがとうございました。SDMはIPSI下での取組を促進させていくため、IGES、日本国環境省、UNU-IAS(IPSI事務局)が共同で2013年に設立したIPSI協力活動です。毎年、選定されたIPSIメンバーに対し、現場プロジェクト、会議やワークショップ、研究活動などのために、10,000ドルを上限とした助成金を提供しています。SDM事務局は、選考が終わり次第、助成対象者を発表します。SDMに関する詳細は、こちらからご覧いただけます。SDMに関するご質問は、SDM事務局(sdm@iges.or.jp)まで直接お問い合わせください。


 本ニュースレターで配信を希望されるイベント等の情報がございましたら、IPSI事務局までご連絡ください。また、日本語の記事をお送りいただければ日本語版ニュースレターに掲載いたします。皆様からの情報提供をお待ちしております。

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SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局
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電話:03-5467-1212(代表)
E-mail: isi@unu.edu

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