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第2回ポスト2020作業部会合同報告会をオンラインで開催

2020.04.02

2020年3月26日、UNU-IASは、国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)、環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)と共同で、「第2回ポスト2020作業部会 合同報告会 ~生物多様性 Super Year 連続セミナー~」をオンライン開催しました。イタリア・ローマで開かれた第2回ポスト2020作業部会(2/24~2/29)に出席した参加者が会合の成果を報告するとともに、世界と日本の今後あるべき生物多様性の目標とその実現方法について議論を深めることを目的とする本報告会には、70名以上がオンラインで参加しました。

冒頭の挨拶では、渡辺綱男UNU-IASシニア・プログラム・コーディネーターが、多くの参加者への謝辞を述べました。第2回ポスト2020作業部会では、愛知目標に続く今後10年の生物多様性の目標設定のための議論の出発点が示されたことを指摘し、その成果の報告に基づき活発な意見交換の場とすることが、本オンライン報告会の開催趣旨であると説明しました。

続いて、道家哲平IUCN-J副会長/日本自然保護協会より、ポスト2020目標ゼロドラフトの概要および交渉の経過が説明されました。道家氏は、従来の愛知目標からの発展が必要であること、その検討には参加型の検討過程が重要視されていることに加え、積極的な目標検討につなげるために、NGOや先住民地域共同体、国連機関など様々な関係者がオブザーバーとして関わることが大事であると強調しました。第2回ポスト2020作業部会の成果としては、ポスト2020枠組みゼロドラフトに関する意見をまとめた文書を採択し、今後の会合へと繋がる申し送りが整理されたことが挙げられました。

中澤圭一環境省生物多様性戦略室室長は、日本政府が、SATOYAMAイニシアティブの展開としてのランドスケープ・アプローチの推進、生態系を基盤とした気候変動対策、防災・減災対策、経済活動における生物多様性への配慮、物流に伴って侵入する侵略的外来種への国際的対処について、インプットを行ったことを報告しました。また、ワークショップでは、SATOYAMAイニシアティブがランドスケープ・アプローチの観点からどのようにポスト愛知目標に貢献できるのかについて、多くの意見が交わされたと述べました。

続いて、柴田泰邦UNU-IASプログラム・コーディネーターが、ポスト2020枠組みに関するUNU-IASからのインプットについて説明を行いました。COP14の決定を受けてUNU-IASが行った熊本でのワークショップでの議論に加えて、第2回ポスト2020作業部会のプレナリーおよび各コンタクト・グループへのインプットが行われたことが報告されました。柴田氏は、IPSIのネットワークが拡大すると共に、ランドスケープ・アプローチに対する欧州各国での関心が高まり、共感を示す機関が増加していることを指摘し、今後より多くの関係者からの理解と協力を得て、新たな枠組みの確立に取り組んでいきたいと話しました。

矢動丸琴子 Change Our Next Decade(COND)/ IUCN-Jユースプログラム・ディレクターは、国際的なユースのネットワークであるGYBN(Global Youth Biodiversity Network)のポジションペーパー、ゼロドラフトの構造を大幅に変更する案をユースとして提示したこと、世代間衡平・人権と自然の権利・変革的教育というユースの3つの優先課題について解説しました。矢動丸氏は、議論を多様なステークホルダーに開いていこうという機運が高まる中、ユースの参画もより歓迎されてきている印象を受けたと話しました。

さらに、コンサベーションインターナショナルジャパン/国際教養大学准教授の名取洋司氏および電気電子4団体生物多様性ワーキング・グループの宮本育昌氏が、補足コメントを述べました。
名取氏は、条約のマンデートを超えるべきでないという議論があったことを踏まえ、各国が協力して生物多様性を守っていくことの重要性、高い目標を掲げることでビジネスの幅広い競争の場の創出を目指すこと、国際的な資源動員に限定せず国内での資源動員の議論を進めることの大切さを強調しました。
宮本氏は、今後、経済セクターの改革、ESG投資、消費者意識の変容の動向を注視していくことを述べ、企業側も実施可能な取り組みを模索しており、今後それらの取り組みを通じてポスト2020枠組みへの貢献を目指したいと話しました。

その後の質疑応答では、オンラインでの即時の質問に加え、事前に受け付けていた質問事項に対し、回答が行われました、生物文化多様性イニシアティブの今後の展開、ポスト2020目標によって想定される企業の汚染対策への影響、海洋生物多様性についての指標を増加させることの必要性、他の条約との関係性、高い目標を設定すると同時に、行動する人々の裾野を広げてゆくことの重要性、またそのために理解し易い言葉で明確に情報を周知していくことの大切さなどが解説されました。

最後に、渡辺綱男UNU-IASシニアプログラムコーディネーターは、今回のポスト2020目標は、国連持続可能な開発目標(SDGs)が定められて以降、初めての本格的な国際的指針であり、SDGsとの関わりからも広く世界的に注目を集める存在であることを指摘しました。そして、生物多様性の保全により資するものとなるポスト2020目標の策定を目指して、今後も議論を重ねていくことの重要性を再確認し、閉会の言葉としました。