お知らせ
その他

国際生物多様性の日2022シンポジウム「すべてのいのちと共にある未来へ」を開催

2022.05.26

IPSI事務局を務める国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、5月22日の国際生物多様性の日を記念したシンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、本年のテーマである「すべてのいのちと共にある未来へ」を軸に、国際的な政策アジェンダに沿った各地の取り組みが紹介されました。

冒頭、主催者挨拶で登壇した大岡敏孝環境副大臣は、「ポスト2020生物多様性枠組」を後押しする30by30目標(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標)の達成に向けたロードマップの公表を含む日本のコミットメントについて述べました。続いて登壇した エリザベス・マルマ・ムレマ生物多様性条約事務局長は、「ポスト2020年生物多様性枠組」では、一人ひとりが自然保全や自然共生社会の実現のために参画することが重要であると述べました。

基調講演では、武内和彦氏(公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長、UNU-IAS客員教授)と国連食糧農業機関(FAO)のナタリア・アレクセーエワ氏が、生物多様性保全の国際動向について解説しました。武内氏は、SATOYAMAイニシアティブが生物多様性と気候変動、人間の健康の包括的なアプローチに貢献していると強調しました。アレクセーエワ氏は、世界中の生物多様性を保全・回復させるための国際パートナシップ「国連生態系回復の10年」について紹介し、地球上のすべての生きものの健康と幸福に関する課題を克服するには、保全と再生が必要であることが研究で示されていると強調しました。

続いて、柳谷牧子氏(IPSI事務局次長)がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、地域住民によって世界各地で行われている保全再生事業について紹介されました。河北潟湖沼研究所の高橋久氏は、河北潟の再生事業として、水質改善や在来野生生物の再生のために地域全体で流域の清掃活動を行っていることを報告しました。

IPSIメンバーであるA Rocha Ghanaのジャックリーン・エンバワイン氏は、コミュニティ内の様々な利害関係者の間でシナジーを高めていく重要性を指摘しました。同団体はガーナのモレ地域の住民が持続可能な方法で木炭用の木材を収穫することで、環境に配慮したビジネスモデルを構築するのを支援しました。

愛媛大学付属高等学校理科部プラガールズは、海洋性細菌によって分解されるPHBプラスチックの低コスト化に成功したことを報告し、マイクロプラスチック問題を解消するためにも、企業と連携しながら今後も研究を進めていきたいと抱負を述べました。

RCE西シドニー広域圏西シドニー大学のブリタニ―・フェルメーレン氏は、水路の健全性の指標ともなるカモノハシの研究を地域主導で行っている事例を紹介しました。本プロジェクトはメディアの注目を集め、研究がさらに拡大したことが報告されました。

環境省生物多様性主流化室長の谷貝雄三氏は、ポスト2020生物多様性枠組みが採択された後、日本政府として速やかに次期生物多様性国家戦略を提示する用意があることを表明しました。また、保護地域以外の生物多様性保全に資する地域(OECM) の認定を促進したり、企業に対して環境に優しい製品やサービスの提供を促すルール作りの検討も重点的に進めていることが報告されました。

最後に閉会の挨拶で、山口しのぶUNU-IAS所長は、UNUが協力機関として国連生態系回復の10年に参画し、教育と再生のベストプラクティスの研究に関する国際キャンペーンを支援していることを報告しました。さらに、「社会生態学的生産ランドスケープシースケープ(SEPLS)の管理における生物多様性と健康、持続可能な開発の関係性」をテーマとしたSATOYAMAイニシアティブテーマ別レビュー第7巻が、「すべてのいのちと共にある未来」を築くための有益な資料になると伝え、シンポジウムを締め括りました。

本イベントは、環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)との共催、および2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)の後援を受けて実施されました。

当日の動画はGEOC YouTubeチャンネルからご確認いただけます