International Satoyama Intiative

SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)は、持続可能な社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の価値を世界で広く認識してもらうことによって、その保全と再生を促進する取り組みです。

震災からのグリーン復興と持続的な地域再生に向けて-「浦戸語り場」開催報告

東日本大震災から1年半が経ち、被災地では復旧から復興、将来を見据えたまちづくりへと取り組みが始まっています。2012年8月25日、東北大学と国連大学高等研究所は、豊かな「里山・里海」環境が残る浦戸諸島(宮城県塩竃市)の住民の方々にお集まり頂き、島々に息づく自然や文化、産業を生かした復興と地域活性化について話し合う『浦戸諸島の将来について語り会う会-浦戸語り場-』を開催しました。

浦戸諸島(桂島・野々島・寒風沢島・朴島)は、宮城県塩竃市の松島湾に位置し、津波が島々を呑み込み甚大な被害を受けましたが、牡蠣や海苔の養殖業の再開、災害公営住宅の建設、田んぼの復興など、復興への一歩を踏み出しています。一方で、住民の方々からは、高齢化や島離れ、後継者問題など、島の将来を懸念する声も多く聞かれていました。

今回の浦戸語り場には、40名を超える島民の方々のほか、環境省、インクカートリッジ里帰りプロジェクト(ブラザー、キヤノン、デル、エプソン、日本HP、レックスマーク)、CEPAジャパンといったIPSIに参加している協力団体、現地で活動しているNPO、今回の企画をお手伝い頂いた山形大学の学生の皆さんを含め80名近くが一堂に会し、今後どういった未来を創り上げていきたいのか、皆で意見を出し合いました。

話題提供として、木村孝義氏(北海道奥尻町議会事務局次長 / 奥尻島津波語り部隊員)と西上ありさ氏(株式会社studio-L / 島根県海士町教育委員会まちづくりコーディネーター)のお二人にご講演頂きました。木村氏は、1993年7月に発生し、200名近くが犠牲となった北海道南西沖地震による奥尻島の被災状況や震災5年後に「完全復興宣言」をするまでの歩みを説明され、ご自身の経験を踏まえ、復興に向けたエールを送られました。

西上氏は、これまで関わってこられた4つの島のコミュニティ(兵庫県姫路市家島 / 長崎県福江市半泊町内会 / 島根県隠岐郡海士町 / 岡山県笠岡市笠岡諸島)のまちづくりの事例を紹介され、地域の状況に応じた3つのまちづくりとして、1) 活性化策、2) 維持策、3) 撤退策の3つの方向性を示されました。

基調講演に続き、島の将来について語り会うワークショップが行なわれました。7つの小グループに分かれ、以下の4つのテーマについてそれぞれ意見を出し合いました。

  1. 島のよいところ
  2. 不安なところ
  3. 島の理想の未来
  4. 実現のために自分ができる小さなこと

ポストイットに書かれたそれぞれの意見は模造紙にまとめられ、全体で共有されました。シンプルな生活の中にある五感で感じる自然の豊かさや景観の美しさ、家族のようなコミュ二ティのつながりの強さや人情味の深さ、地元の食材の美味しさなどが「島のよいところ」として挙げられた一方、震災後の仮設住宅での生活の不安のほか、島離れによる人口減少とそれに伴う医療・交通などの公共サービスの低下、高齢化、後継者不足、基幹産業である漁業の先細りといった、震災前からの課題も「不安なところ」として挙げられました。

「島の理想の未来」としては、自然と関わりながら、島の自然とともに育まれてきた生業(牡蠣、海苔、定置網、畑)を続けていきたいという意見をはじめ、島の交流人口を増やしたい、子供の声が聞こえ、若い人たちが魅力を感じる島にといった声も多く、そのために特産品の付加価値を高めることやインターネットを活用した販路拡大などが提案されました。そういった未来の「実現のために自分ができる小さなこと」として、島の魅力や楽しさを発信していく、若い人たちに自分の経験や技術を伝えていくといった提案のほか、島の木や草花一つ一つに名札をつけ、島に来た人々に自然観察の勉強に役立ててもらいたいといった意見も出されました。

語り場に参加された住民の方々からは、今回のような議論を今後も続けていきたいという前向きな意見が多く聞かれました。また、ワークショップで出された意見を行政用語でまとめ直し、地域住民の方々の声を実際の復興プロセスに反映させていくことが重要であるということが確認されました。